2021.04.18

広報しろたまり その7 職人の意地 見直しお願い編

(小麦だけで大豆を使わないしろたまり麹)

とにもかくにも、表示の合法化が先決、
名前にこだわる自我を捨ててしまえば、あとはスムースに。笑

ちょうどこのころ、自然食業界で有名な松田のマヨネーズさんでも、表示違反と指摘された事案がありました。松田さんは上白糖などの精製された糖類を使いたくなくて、ハチミツで甘味をつけていたのですが、それが違反だと指摘されたのです。より安全で健康的な原材料を使う生産者を法で規制することはおかしいと、こちらは法改正を求める市民運動に発展していきます。

しろたまりが醤油として認められなかったことは、いくつかの新聞にも取り上げられ、たまたま同時期だったため、松田さんと並んで記事になったこともありました。私は面識はなかったのですが松田さんに電話をして、どうされるのかお話を聞かせてもらったことを覚えています。

松田さんは少しお疲れのご様子で、自家製のマヨネーズを使っていたら、美味しいから売ってほしいと言われて作るようになったけど、こんな騒ぎになって・・・。
マヨネーズタイプって表示したから、とりあえずこれでいくよとおっしゃっていました。

JAS法や品質表示基準について諸々調べていくと、それが決まっていく道筋が見えてきます。原案が業界団体から農水省に上がっていき、担当部会で学識経験者や消費者団体、流通業界代表者の皆さんを交えた議論がなされ決まっていくようです。

だとしたら、まずは業界団体から。
該当する法律や基準は5年に一度の見直しが義務付けられていて、その見直しの業界会議にオブザーバーとして参加させてもらえるように地元の組合にお願いし、東京の業会団体総本山に突撃しました。笑
ここでのやり取りをそのまま書くと、関係各位にご迷惑をおかけするためひかえますが、私は見事に玉砕します。一部の技術系の方にはご理解が得られ、大豆不使用の白醤油は認めてもいいのではと応援していただいたのですが、醤油=大豆の壁を崩すには私はあまりにも小さすぎたようです。

悶々とする中で、某新聞社の記者さんから電話をいただきます。まだやれることがありますよと。
正式に手順を踏んで申請すると、農水省の担当部会で意見陳述ができると言われたのです。
そうとなれば、やらない手はないと申請しました。
と、ある人から電話が。
ここも詳しく書けませんが、ようは意見陳述を止めるように圧力をかける電話で、思いっきり上から子ども扱いした言い方をされ、おかげで覚悟が座り出来ることはすべてやろうと決心します。笑

当日、霞が関の農水省に行き、会議室前の廊下で待機、時間が来て5分間話させていただきました。醤油の起源、中国の古い文献で醤材料(ひしお)として豆・麦などの穀物と肉・魚・草なども使われたとあり大豆は必須ではなかったこと。白しょうゆは元々小麦が主原料であり大豆はごくわずかなこと。小麦だけで作ったしろたまりのお客さまからの評価のこと。などなど説明し、大豆100%の溜しょうゆのように、小麦100%の白しょうゆを認めてほしいと。

後日文書で結果が、
業界案通りになり、私のお願いは認められませんでした。

認められなかった理由。
1 この件を要望している生産者は貴社のみであること。
2 現行のしろたまり生産量が非常に少ないこと。

以来、小麦醸造調味料として続けています。

あの意見陳述の日、
農水省前で、知人がひとり私を待っていてくれました。
ひとりじゃ寂しいでしょ、何もできないけど応援に来ましたよと。
帰り道、いろいろ話しながら東京駅まで歩きました。

結果、何も変えることは出来ませんでしたが、しろたまりを気に入ってくださって、応援してくださる方もいらっしゃることを知ります。
それで十分で、これからも作り続ける意味があるとわかったような気がしました。