2021.04.16

広報しろたまり その6 職人の意地 表示違反編

確か平成12年(2000年)だったと思いますが、突然お手紙をいただきました。
名古屋農林水産消費技術センターから、しろたまりのラベル表示の改善通知書です。

不適合の内容
しょうゆの定義に該当しない製品に「しろしょうゆ」の用語を使用している。

ラベルの裏側、いわゆる一括表示の名称欄に、しろしょうゆと書いていたことについて、早急に改善しなさい、という通知です。
原因は私の不勉強にありました。

醤油を定義するJAS法では、大豆を必須原料としていますので、小麦だけで大豆を使わずに作ると醤油の定義から外れます。私はそれを知ったうえで、ラベルに「しろしょうゆ」と堂々と表示していました。
なぜか、JASマークをつけなければ関係ない、と思っていたから。

JASをとるとらないは任意で、JASマークの無い醤油は、小規模生産者を中心に数多く流通しています。JAS法上の醤油定義から外れても、非JAS品として販売すれば問題ないと、勝手に思っていました。これが完全に間違い!

醤油には別に品質表示基準があり、この基準はJASマークの有無に関係なく、醤油と表示すれば従う必要がありました。この基準でも大豆が必須になっていたのに、私がそれを知らなかったという、お粗末な話です。

このような表示違反は今では大騒ぎになりますが、当時は早く改善しなさいと、お優しいお言葉でした。
私のするべきことはふたつ、当然ですが至急合法な表示にすることと、同時に大豆を使わず小麦で作る白醤油を法的に認めてくれるように要望することです。

まずは表示の合法化ですが、この方法もふたつで、ごく少量の大豆を入れて現行法に合わせるか、このまま大豆不使用で名称から「しょうゆ」を外すか、の選択でした。
多くのお客さまに手紙を出しご意見を伺ったところ、圧倒的多数で大豆不使用のご希望、正直なところ驚きと困惑です、実は私は少量の大豆を入れたかったから。

醤油屋に生まれ、先代としろたまりをつくり、最高の「しろしょうゆ」だと信じてご案内してきました。そのしろたまりが醤油でなくなるなんて、そんなバカなって、自分の無知を棚に上げてそう思っていたんです。

このとき、ある大豆アレルギーの女性から長文の手紙を頂戴しました。やっと見つけた大豆を使わないしろたまり、お願いですから入れないでくださいって・・・。
これであきらめがついて、しょうゆの名前を捨てる決心をしました。代わりにラベルに表示した名称が、小麦醸造調味料。

お役所からは、醤油風調味料と表示するように言われましたが、どうしてもその名前が嫌で、頼み込んで私が作ったこの造語を許してもらいました。バカなオヤジのささやかな抵抗です。

さて次の仕事は、定義と基準の見直しをお願いして、大豆を使わずに小麦100%麹で作る白醤油を法的に認めてもらうことです。

この話は、次回また。