広報しろたまり その14 木桶復興にかける男たち3
日本の伝統的な木桶は、金属をいっさい使いません。
板と板は切り込みなしの平面で竹串でつなぐだけ、そうやって横板をぐるっとつないで、竹ひごを編んで箍をつくり、桶をひっくり返した状態で大きい箍から順番に上からはめて叩き落して締めていきます。それをまたひっくり返して、やはり竹串でつないで円盤状にした底板を、上から入れて叩いて落としていく。
板の微妙なカーブ、板と板が合わさる平面の角度、目指す位置でしっかり締まる箍の大きさ、見てるだけの私にはまるで手品みたいです。
このようにして作った木桶、古くなって漏れ出したら、まずは竹箍の入れ替えをします。ステンレスのパイプで閉めるのと違い、竹箍は全体に均一な力を加えて締めることができるそうです。金属パイプは桶の部分で力の強弱が大きく、締めすぎると歪んでしまうらしい。
それでも漏れるようなら、一度バラバラにして一枚づつの板をカンナ掛けし、少し小さくなるけど組み直してやるとグッと若返る。こうして木桶はちゃんと手入れをしてやれば、100年200年と使えるんだとか、なんとも凄いですねぇ。
あれは1月の新桶造りに遊びに行った1年目だったか2年目かな、夜みんなで呑んでて山本さんからいきなり、蜷川さん、今回作った新桶が1本行き場所がまだ決まってなくて、じつは出来が今一つ気に入らなくてね、格安にするからいらない?
スーパーで値引きシール貼った商品に飛びつくオバチャンみたく、即買い!笑
ほぼ板代だけで譲ってもらいました。
この桶を、改めて後日トラックを運転して碧南から引き取りに行ったんですが、電話で日程を相談したら何日の土曜日でとなって、すぐに帰る?って聞かれて、翌日は日曜だしとくに急がないから一泊でもって言ったら、その日曜日がヤマロク祭りだったらしく、祭りの中で新桶の出発式をしようとなり、これがまた大騒ぎ。
雨の中、地元のTVカメラも入って、かわいい娘を遠く愛知まで嫁に出すお父さん的なノリで、派手にお見送りいただきました。
写真がそのときの様子です。写ってませんが、手前にはご近所さんとか大勢の人たち。
新桶を自分の蔵に入れたとき、遠い昔の子供のころ、新しいおもちゃを買ってもらったときのような興奮を思い出しました。撫でさすりながらニヤニヤする気持ち悪いオヤジ。笑
山本さんからも聞いていましたが、新桶の1回目の仕込で出来る醤油は、味香りとも今一つの出来だとか。しろたまりの場合はどうなるのか、やってみればわかる!
じつはこれがホントにぜんぜんダメで、とても売り物にならないような状態でした。仕方なく普通の白醤油に少しづつ混ぜて使い、2回目の仕込へ。これは1回目よりはマシだけどのレベルで、3回目にようやくしろたまりらしくなり落ち着きました。
桶に用意ができていない状態ではいいものは出来ない、ということでしょうか。恐らくは醸造期間が短いがゆえに、濃口よりもさらに準備に時間がかかるようです。